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転倒

【礒淵】

 雨が降ると地面が滑って転倒しやすくなる。
 この季節、桜が散ってアスファルトをピンクに染めて、あ、綺麗だななんて思っていると桜で滑って腰を強かに打つなんてこともあって、これもまた情緒、をかし、一句詠もう、なんてことになる。
 ま、一句詠む人はいないだろうが、俳句ソネットをひねるなどして自分を誤魔化さないと恥ずかしくてやってられない。
 
 今日、駅の階段で転倒する人がいた。中年男性だった。
 昇り階段でつまずき、手をついていた。
 大きな音がしたからそれなりに痛かったと思う。
 しかし男性は何事もなかったかのように立ち上がり、そそくさとホームへ上がっていった。
 
 この「そそくさ」という動作に転倒したことへの恥のようなものが見て取れる。
 
 そそくさ、つまりは小走りである。
 のったりまったり階段を上っていてつまずいたのだから、次に転ばないようにするためにも階段を注視して、右足、よし、左足、よし、右足、よし、という具合に指で確認をして昇るべきである。
 しかし、男性はそそくさと階段を上っていった。
 また転ぶんじゃないかと思った。そうなったらおもろいな、とも思った。
 
 子どもの時こそしょっちゅう転んでいたが、最近では転ぶことなんてない。
 子どもの頃は転んで泣いても許されていたが、大人になって泣くことは許されない。
 泣いたら本当に終わりだ。社会的に、死ぬ。
 大人になると子供の頃とは質量が違うため転倒時のダメージが大きい。ちょっと泣いてしまうくらい痛い。
 しかし泣くことは「許されない」ので泣けない。
 友達と歩いていて転んで、友達に笑われる、心配される、そうなったらちょっとくらい泣いてもいいのだろうし、後味もよろしい。笑い話にできる。
 しかし、一人で歩いていて転んだ場合、誰も心配してくれない。
 派手な音で転んでその場にうずくまるなどしていたら高校生が助けてくれるかもしれないが、このフローズンジャパンでそのようなことは珍しい。
 転んでも社会は動いている。
 雑踏がいつもより明確に耳に入る。
 だれか自分を嗤っているのではないか。
 ちょっとくらい心配してくれてもいいではないか。
 人間は生まれたときより孤独なんだ。
 僕も、君も、一人なんだ。 
 突然、母親の顔が浮かぶ。故郷の夕日が懐かしくなる。
 泣きそうになる。
 痛い。
 ジンとする目頭に怒りさえ覚える。
 立ち上がり、そそくさとその場を後にする。
 
 転んだ場所が憎いのではなく、転んでしまった自分が憎い。
 あの程度の段差に一本取られた恥。
 そして人が転ぶ姿は基本的に滑稽極まりない。
 さらし者になる恥。
 
 この恥の二本足が「転倒の恥」を支えている。 
 支えられないのでまた転ぶ。




 

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