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食事美入門

 【礒淵】

 自分の写った写真を見たことがある。
 自分の写った動画を見たことがある。

 それぞれ文句はあるのだが自分のイメージとはかけ離れたナニカがそこには写っていることが多い。
 声、なんてのは自分の聞いている自分の声とはまったく異なるので、聞いてると呪いにかかったようになり、鬱、になる。
 
 食べている自分を見たことがあるだろうか?

 僕は、ない。

 食事中に自分の食べている姿はどんなんだろう、と思って頭の中で俯瞰してみた。
 もしかして、とても気持ち悪いのでは、と思った。
 とても下品なのでは、と不安になった。
 
 箸の持ち方は正しいし、ナイフとフォークも使いこなせているはず、だがそういう次元ではなくて食物を食んでいる我は動物的で生々しくて人間からかけ離れた存在?と思ったのだ。具体的に食事の様子を観察してみよう。
 
 僕はくにゃくにゃの猫背なので食事中も猫背だ。意識して治すようにしているのだが、食しているときはふにゃん、となってしまう。
 食事中の猫背は傍から見ると大変気持ち悪い。
 昔から「姿勢よく!」とマンガで言われているのはこのためだ。
 ぴちっとした姿勢で食事をしないと人間らしくない。ぴちっとした姿勢で食事するのは人間だけだからだ。
 背を曲げてスプーン片手に三日ぶりのメシ、と言わんばかりに頬張る姿はまさしく餓鬼、畜生、獣の類である。
 だから姿勢が悪いのはいけない。しゃんとせなあかん、のです。

 僕は茶碗を左手に持つことはしない。疲れるからだ。持つとしても終盤の頃で、さっさと終わらしちまおう、という時に左手で持つことにしている。
 そもそも茶碗を持つのは、昔、まだひとりひとりが膳で食べていた時代の名残だ。
 膳は低いので茶碗は左手に持ち、米がこぼれないように口元に持っていかねばならない。
 しかし今の時代テーブルでイスで食べることの方が多く、膳、なんて低いもので食事をすることは少ない。だから左手で持つ文化が廃退しつつある。
 だが、左手で持っていないと、なんだか奇妙だ。
 テーブルの上の茶碗から口まで、膳、ほどの距離はないけれども近すぎるというわけでもない。しかし左手で持つほど遠くでもないので僕は顔を茶碗に近づけることになる。米に軽く会釈しているようだ。
 これが、いけない。
 左手を使え、と言いたくなる。
 左手を使わないと不器用に見え、教育が脳漿で希釈されたんだな、と人によっては解釈して憐れみの目を向けてくるだろう。左手も使えないのかこの鈍獣は。祖国の恥さらしか貴様、そう罵られてもおかしくないことなのだ。
 左手で茶碗を持つことが公式のフォームなのだから、持つべきだ。

 ラーメンの汁をすする時、僕は蓮華を用いることが多いが、たまに椀から直接すする。
 この時、猫背ではいけない。
 卑しい身分の低級下郎が、へへっすいやせんねっ、と言わんばかりの様子である。
 背筋を伸ばして、堂々とすすらねばならない。
 『続 姿三四郎』ラストシーンで三四郎がスープをすするシーンがある。あすこで三四郎が野良犬みたいにスープすすってたらどう思いますか?なんでこんな奴が強いかなぁ、と思う。この姿勢じゃ敵役だろう、と思う。
 椀に直接口を付けるときは堂々としていなければならない。おれは、食ってやるぞ、と威勢を示さねばならない。
 それから、椀直ですするとき、おちょぼ口と言うのですかね、くちばしを出して恐る恐るすすってはならない。
 熱さに怯えている、と思われてしまう。堂々としないと格好が良くない。
 
 ラーメンを食べるときは人間の食事風景の下賤さが如実に出てしまう。
 まだあるぞ。
 麺をすする時に、椀に口を付けて箸で流し込むようにすすっている人いますね。
 あれ、いけない。
 猫背、おちょぼ口、左手の不器用、この三点をしっかり抑えてしまっている。
 まぁ、ラーメンどんぶりを左手に持って食べる人はそういないが、とにかく左手がお留守になっている。椀を押さえなさい。
 ある人はラーメンを夢中ですすりながら左手で、見もせずコショウを取ろうとカウンターの上をもがく、ばんばんばん!水を零す、それならにんにくを入れようとまた見もせずもがく、にんにくを間違えて頭にかける、ニンニグ、ニンニグどご行っだ、「こうなったら」とどんぶりに顔を突っ込み0距離でラーメンをすする、ウンメ!完飲!
 こんなんなったらもう人間として終わりですよ。僕はこういう人間を見かけたら即刻エクソシストを手配して、捕縛、聖水からの塩――塩分過多だが仕方がない――してからに聖杖でボコボコに殴る。
 まぁ、冗談だが、とにかくラーメンは椀から口を離してすするべきだ。
 服に汁が飛び散るかもしれないが、そんなことを気にする人間はラーメンなんて食べなくていい。もしくはゆっくりすすれ。


 このように、僕、もとい人間が食事をする姿は美しくない。
 
 食事する姿も美しくて初めて美人なのだ。
 美人になるには気を抜いてはならない。

 マナーの良さが結句食事美の秘訣だが、なによりも美味しく食べる人がやっぱり好ましい。
 美味しい時はおいしい、と素直に言えたり、晴れやかな顔をしたりするとよい。
 


  

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